極上の映像制作
乗用車のライフサイクルをみると、運転されている時間は多くて五%程度とされ、それほど使われる機械ではありません。
生活の中で、自動車を使わないように導く余地はあると思います」と上岡氏は語る。
民生・運輸部門で即効性のある対策はない。
同時にこれらの提言を眺めると、社会のあらゆる場で、無理なくCO2を減らせる「できること」が多いことも分かる。
長い時間はかかりそうだが、小さな努力の積み重ねが、温暖化の歯止めになることを信じたい。
人類の歴史上初めて、空気に値段がつき、流通する時代が訪れた。
実感することの難しいCO2の負担を金銭や会計上の視点から描いてみる。
各国の専門家がCO2を排出する権利(排出権)の法律や会計上の位置づけを検討している。
これは減らすことで利益が得られるかつて類例のない特徴を持つ権利だ。
「仁書徳と生産殖利とはまったく合体するものであるということを確信し、かつ事実においてもこれを証拠立て得られるように思うのであります」渋沢栄一は二○○三年五月に、下部機関の国際会計報告解釈委員会で排出権の会計上の意味について草案をまとめ、各国の専門家の意見を集めた(注一)。
案では、排出権は金融資産(株、現金など)ではなく、無形資産(特許権、のれん代、ブランドなど)の一種とみなされるべきだという。
そして、公正価値(時価)で評価するのが適切とする。
日本でも排出権の法的な会計上の基準はまだ検討中だ。
米国やEUの会計基準では時価評価が原則だが、日本では無形資産は時価評価する必要がなく、取得価格で計上してよい。
どのような形でも会計処理をする場合には、CO2の値段を決めなければならない。
英国は二○○二年春に自国内だけの排出権取引市場を創設した。
ここでは一トンで、五ポンド(約九五○円)前後で取引が始まり、同年秋には約一三ポンド(約二五○○円)まで急騰。
しかし、その後は一転して急落し、二○○三年では二,三ポンド(約三八○,五七○円)で取引が低迷している。
排出権取引ブローカー、フューチャーズ・ソリューション社(本社ロンドン)のマーチン・クライン氏によれば、「初めは投機的に買いを入れた機関投資家がいたが、排出権を削減した企業から売りが強まり急落した」という。
世界銀行は先進国や企業から出資金を募って「炭素基金」を設立する。
京都メカニズムでのクリーン開発メカニズム(CDM)に融資をして、生み出された温室効果ガスの排出生まれ始めた議定書ビジネス権を出資者に還元しようとする試みだ。
日本でも同様のものを日本政策投資銀行が構想している。
世銀の炭素基金では、一トンを五ドル(五五○円程度)で創出することを目標にしている。
また、京都議定書上認められたものではないが、CDMや共同実施(J1)で民間企業などが排出権を生み出し、試行的に企業などに対して仲介している。
現在この価格は、一トン当たり五,一○ドル(五五○,二○○円)程度を推移している。
ちなみに、日本人の大人の栄養摂取量では、一日三五○グラム、一年で三一○キロのCO2を呼吸によって排出する。
これは、一年で五○円程度の価値だろう。
価格は市場メカニズムの中で重要なシグナルを送り、消費者と生産者の行動に影響を与える。
CO2に価値がついたことで、新たなビジネスヘの関心が生まれつつある。
一方で、温室効果ガスの排出規制を受けることや、炭素税が施行されて課税されるなどの形で、企業に損害が生じる可能性もある。
空気が経営を揺るがすことになりかねない。
このために自社の温室効果ガスの排出量を把握し、いかなる形の政策にも対応できるように「守り」の準備もしなければならない。
第一約束期間が迫るにつれて、日本社会のあらゆる場で温室効果ガスとCO2の削減が迫られることは間違いない。
その中で生まれそうな、関連ビジネスを予想してみる。
CO2の排出はエネルギーの使用量と表裏一体の関係だ。
省エネがクローズアップされるに違いない。
それに伴うエネルギーのコンサルタント事業が注目されるだろう。
日本総合研究所など、一部の企業がここ数年、ESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業に乗り出している。
大規模事業者の省エネを行い、その削減分から対価を受けるビジネスだ。
二○○二年の日本での省エネ関連工事の市場規模は約五○○億円とされ、この種のビジネスは急速な成長が見込まれる。
風力や太陽光発電、水素燃料電池などの新エネルギー源は地球温暖化防止の面から改めて見直されている。
これらの新エネ関連のビジネスは急速な成長が始まった。
エネルギー効率のよい、家電製品や産業用機械、乗用車、住宅などに、消費者の関心は高まっている。
また、「CO2を減らす」ことで、環境にやさしい企業、商品と印象づけることが、企業イメージや製品PRの重要な要素になった。
さらに、多国間協力でCO2を削減する京都メカニズムをビジネスにする動きがある。
削減プロジェクトの調査や実施、市場取引のブローカー業務などだ。
新ビジネスを具体的に追ってみる。
中央青山監査法人は一九九九年に中央青山PWCサステナビリティ研究所を設立。
温室効果ガスの排出量を計測。
評価し、会計処理する分野に先駆的に乗り出した。
京都議定書の取り決めが社会制度に組み込まれる中で、この種のビジネスが急速に拡大すると見込んだためだ。
炭素の排出量に課税する「炭素税」が環境省で検討されている。
この税が実現すれば、税務や会計上、CO2の排出量を測定することが今まで以上に意味を増す。
事業を担当する大串卓矢公認会計士は、「空気を会計上組み入れるという、これまで経験しなかった事態に企業は対応しなければなりません」と語る。
この研究所を設立した当初の顧客は大手メーカーや「環境志向企業とのPR」を狙うベンチャーが中心だった。
だが、二○○二年二月に温室効果ガスの排出量などを検証する人材育成プログラムを始めたところ、業種や規模の多様な八○社が参加。
「社内に環境のプロを育成する動きが企業に広がっている」(大串氏)という。
京都メカニズムの分野でも、新たな活動が始まった。
チリで環境に負担をかけない小規模の水力発電を行い、温室効果ガスを減らすことで、その削減分の権利を仲介。
中国の炭鉱でメタンガスの削減可能性を調査。
このような、かつて類例のないビジネスをナットソース・ジャパンは行っている。
同社は二○○一年に三菱商事、東京ガス、東京短資など一四社の合弁企業として設立され、京都メカニズム関係では国内で最も活発に動いている企業だ。
同社はすでに二○件程度のCDMやJ1を日本企業に仲介した。
米国のナットソース社と商社の合弁会社であるために、国際的なネットワークを持つことが強みだ。
二○○二年六月に日本が京都議定書を批准したことをきっかけに、「企業が温室効果ガスの削減策に真剣な関心を向けるようになった」と同社の片桐誠副社長は語る。
排出権取引でも新たな動きがある。
金や原油などの商品先物市場を運営する東京工業品取引所(東工取)の中沢忠義理事長は「仲介市場を設けたい」とPRする。
東工取は九九年度から市場の誘致を念頭に、排出権取引の研究をしてきた。
もちろん狙いは「ビジネス上のメリット」(中沢理事長)だ。
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